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それは、梅雨時のつかの間の晴れの日のこと。
日飛の村では、稲置・道師の両家が入り乱れて、新しい子の誕生を祝う祭りを行っていた。
「稲置の那由多、道師のヤジロ、ここに二男児の誕生を祝い、祭を執り行う」
祭壇の老婆が声を張り上げる。彼女は代々日飛の村の巫女を司る一族の末裔だ。巫女の一族は稲置・道師が日飛を二分する以前からこの地に住んでいる。
老婆の声を合図に、祭囃子が始まる。神楽鈴が鳴り、人々は歌い踊る。
「主役は」
「主役はまだか」
人々は囃し立てる。
那由多もヤジロもそこにはいなかった。
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