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◇
「あれ?」
「一夏、どうかした?」
「いや、箒がいないなぁって思って……」
早朝。いつものメンバーで朝食をとっていた俺は、その中に箒がいないことに気がついた。
(いや、違うな。そもそも箒が食堂に来ていないんだ…)
普通なら食べなかったりする子もいるだろうが、箒の場合は朝練ぐらいの時しかしない。
どうも集中を切らさないように…らしい。
ギリギリならともかく、朝練後に余裕がある場合はすぐに食べれるサンドイッチやおにぎりぐらいはとりに食堂に来るはずだ。
「珍しいですわね。箒さんがこの時間に食堂にいないなんて……」
セシリアが時計を見ながら言う。
「多分…って言うか完全に寝坊でしょうね。どうすんのよ、確か一時限目って一組と二組の合同でIS実習だったわよね?」
「うむ、教官の受け持つ授業だぞ?」
「大丈夫かよ…箒」
朝練とはいえ千冬姉の授業に遅れるのは寿命を縮めるのと同義だぞ。
「僕、見て来ようかな……」
と、シャルが席を立ち上がった時だった。
「~~~~~~!」
声にならない声で廊下を猛ダッシュしこちらに駆けてくる箒の姿が見えた。
(うわぁ、勇者だ……)
俺に出来ることは、せめて廊下を爆走する箒が千冬姉に見つからないように心の中で祈ることだ。
「待て!篠ノ之!」
ビクゥ!
箒の後ろから鬼の声……じゃなかった。千冬姉の声がした。
ああ、顔がどんどん青ざめてくぞ…………。
「さ、さぁ、私達も行くぞ。一夏」
「え?ちょっ、ラウラ!?」
「一夏、織斑先生が食堂に来たんだよ?」
「つまり……わかりますわよね?」
「へ?」
千冬姉が食堂に来たからなんだってんだ?
「バカ!周りを見なさいよ!」
鈴に言われたとおりに辺りを見渡すと、さっきまで楽しく談笑していた人たちがそそくさとトレーを返却して食堂から出て行く。
つまり、授業の時間が近いために「いつまで食べている!」と注意しに来たわけだ。
今はそれが箒によって集中がそっちにいっているのか。
「………………」
(すまん箒!さすがに千冬姉相手じゃ助けられん!)
俺は心の中で合掌しながら、他四人に混じり、逃げるように食堂を後にした。
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