――鏡の中の自分。

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 ――はベットの上で上半身を起こし、ゆっくりと視界を巡らす。  白いベット。白い壁。白い天井。さらには白い目覚まし時計。  殺風景、というのがこの"部屋"についての感想だった。物が少ないわけではないのに、下手な統一性のせいで趣味の悪くない家具たちが元気をなくしているように見える。  ベットの質感に違和感があったが、寝起きのせいということにして立ち上がる。  足元には何もない。部屋は整頓されていてキレイだ。これまた白いカーテンから差し込む僅かながらの光が妙に心地良い。  もしかしたらこの内装はこの光のためかもしれない。欠伸をしながらそんなことを考え、頭を掻く。  そこで、――の動きが止まった。  髪が、短い。  自分の自慢は親譲りの金色の髪で、腰を越える辺りまでは伸びていたはずだ。最近切った、という記憶はどこにもない。  間違いはないか。胸に手を寄せ、何度か深呼吸してから再び自分の頭へと手を伸ばした。 「……短い」  しかも髪質も悪くなっている。昨日夜更かししただろうか? いや、そんなはずはない。昨日は何もなかったので、好きな男子の写真を堪能して直ぐに眠りついたはずだ。  第一、それでは短い理由にもならない。  ここで――は初めて"可笑しい"という感情を抱いた。真っ白な部屋が、自分を追い込んでくるような錯覚さえ覚えてしまう。  体中から嫌な汗が吹き出る。どうして自分の部屋で、こんな汗をかかなければならないのだ。 「違う」  ――は口に出して否定した。
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