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ある日、福祉施設に遊びに行きました。遊びにいくという表現は可笑しいかもしれませんが、心休めに行きました。
その日は風が強く、雲一つない青空。
その福祉施設にある一室に僕は座っている。その席の隣に虫歯だらけの30代男性。彼は昔ワルで、みんなに迷惑ばかりにかけていたらしい。何故そんな話を僕にしてくれたのかは分からない。ただ、心の中でこの人とは深く付き合ってはいけないと察した。
それから、僕がもってきていたHYのアルバムをかけると、彼はこう言った。「これ、HY?、俺好きなんだよねぇ。」その人の表情は優しく、僕も「そうですよ。懐かしいでしょ、HY。」と言うしかなかった。
その後、喫煙場所で彼ともう1人の男性と3人きりになった。
彼らは仲が良いみたいで、2人で楽しく煙草を吸っていた。その煙りは渦を巻いて空へと消えていく。僕はそんなふたりをはたから見ながら煙草を吸う。3人の呼吸がアンバランスな中で点いたり消えたりする。それはまるで、誰かにSOSを送っているかのようなモールス信号に思えた。そして彼が言った。「3人で飲みに行こう。」僕は迷ったが、「本当ですか?」と聞く。彼はニッコリと歯のない笑顔で笑った。そしてもう一人の顔を僕は少しみた。もう一人の方はやめておこうと言わんばかしの表情。それでも彼は強くごり押しする。その後、何回か会話を交わし、飲みに行くことに決まった。
3人で福祉施設を夕方に出て、ブラブラと街を歩く。その雰囲気はいつも独りで歩くのとは違い、少し心地好かった。そして、焼き鳥屋の前を通ると良い匂いが腹の中を掻き立てる。
一件目は立呑屋。
生中を一杯ずつ飲み、おでんを少しかじりながら余り言葉を交わすこともなかった。
二件目は今風の居酒屋。
みんなでポテトフライを酒の肴に色々な事を腹を割って話せた。
みんな一番は人間関係に悩み、結局は自分に跳ね返ってきて自分を責める。その繰り返し。話を聞いている中で、自分が大きくも小さくも感じた。
ふたりが声を揃えて言ったのは、若いときは余り深く悩んじゃいかん。という事。
今の僕にはサッパリ分からない。でも、いつか気がつくのかも知れない。
人の波に乗るのは難しい。でも、波の一員になるのは意外と簡単な事なのかもしれない。
その中で自分というものを見つけてみたい。
あ~ 美味しかった。
ご馳走様。
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