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電話の向こうにはもう一つの世界が広がっている。
僕は、電話というものに執着があるみたい。
それは会って同じ空気の中で会話を交えるのではなく、向こうの世界にコールするから。
寂しい僕にはわかる。
いつも暗い真っ暗な世界にいた自分に、一寸の光を与えてくれるから。
昔、小学校に入る頃、こんなキャッチフレーズが流行った。友達100人できるかな?
今、考えると無理難題のように感じるけれど、あの時は素直に出来て当たり前のように思っていた。その言葉の難しさなんて感じる暇もなく。
もう少ししたら、鳴らない電話が時を告げる。13時ですよと。本来の役割を見失った電話はアラームやカレンダー、音楽プレーヤーに変化して存在意義を主張してくる。そんな電話を僕は知らんぷりしてやる。だって、電話らしくしてくれないんだもん。そんなある意味寂しく切ない彼と、ある時はベットで、ある時は喫茶店で時を共有する。彼の定位置はいつも左ポケットで、時々ハンカチを取り出すときにすれ違い心の中で挨拶をする。
彼はどう思っているのだろう?言葉数少ない彼はいつも冷静でシューとしていて、朝、僕を起こす時だけかんしゃく持ちになる。かの有名な夏目漱石もかんしゃく持ちだったらしい。天才はだいたい厳しい弱点を持っている。その事に苦しめられ、時には独りで泣き、夜通し何かに打ち込む。今の天才、10代で成功と名声を勝ち取った人間と少しタイプが違うような気がする。彼らも懸命に努力をしているが、昔より親の七光りが強いように思う。つまり親の行動次第で、運命が180度変わるといっても過言ではないように僕は思う。
だから僕は子供の教育に力を注ぎたい。彼らが後10年もしたら、新風を送ってくれて、世界をより良いものに変えてくれると信じているからである。
これから日本は高齢化社会に突入する。そして、それを助ける基盤になるのが10代~20代だと思う。今は、震災の影響、原発、大きい悩みが人の心を埋め尽くす。そんな中彼らの風が新しい風穴を開けてくれると信じたい。10年後の桜は果たして綺麗だろうか?
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