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そう、彼女には家がない。いや、厳密にはあるのかもしれない。それが家と呼ばれる品かは定かではないとして。
「河川敷はもうそろそろ限界かなぁ。アイツ等来ちゃったし」
後ろを振り向きながらポツリと呟く。彼女の背後には誰もいない。
「大体、身分証明できるものなんかあるかっての。学生証見せるわけにも行かないでしょうが」
どうやら、彼女には独り言を言う癖があるようだ。
「そうよ、第一、廃車の中で寝泊まりしているような人間に身分証明させようってのが間違いだわ。間違いよ」
彼女には家がない。厳密には廃車の中といえるのかもしれないが、それを家であるとは、世間一般から見たときにはあり得ないだろう。
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