雪の日のスピカ

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「……アイツ等の目が光っている、マークされたあそこにはもう戻れないかな。ごめんね、ゲンさん、スーさん。黙って出てきちゃって」  ゲンさん、名を時田源三郎と言う。スーさん、名を鈴木時宗と言う。両名52歳。河川敷のダンボールハウス在住のホームレス。  この両名と肩を並べていたこの少女、つまり命は同じく河川敷の廃車に住まう、所謂ホームレス。 「ホームレスじゃないっちゅうねん! 自由人なだけやねん!」  似非関西弁が駅前広場に霧散した。 「さっきからあの子なに?」 「誰と話しているのかしら?」 「あれ、大丈夫?」  辺りから何か聞こえるが、彼女は気にしない。気にしてはいけない。気にしていたら生きて行けない。 「どもども」  周りに軽く会釈をして、彼女は駅へと足を進めた。特に理由はない。ただ、前へ進み出しただけ。本当のことを言うならば、現在地と帰還方法の確認。切実な問題、彼女はここが何処だかわからない、所謂迷子と言うやつだった。
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