雪の日のスピカ

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「星を見ると思い出す……」  翡翠 瑠璃は、まるで深淵のような、吸い込まれそうな程、漆黒に染め上げられた夜空を見上げ呟いた。 「失わなくては分からないなんて莫迦みたいだな。でも、失ってしまわなければ、それがどれほど大切なものだったかなんて分かりはしなかったんだろうな……」  静謐。風すらもが凪ぎ、音のしないアスファルトの上に、衣擦れの音がやけに大きく響いた。  桎梏。彼自身が自らに科せた枷。忘れないように、記憶を風化させないように。 「星を見ると思い出す……まだ、俺は囚われているのか」  忘れられていたかのように、闇夜の空間に一陣の風が舞った。 この物語はフィクションです。作中に登場する人物、団体等は全て架空のものです。なお、この作品に登場する人物は全て18歳以上のものです。18歳以上なんです!
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