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逃げ場なんてものはどこにもない。
皇 命は焦っていた。逃げ出したのは悪いことではあったが、逃げ出さずにしては、今ここで生きている保証は無かった。
「あたしの名前はミコト、命と書いてミコトなのになぁ……今、絶体絶命のピンチっ!?」
シュバッと誰もいない虚空に突っ込みを入れる。虚しさと周囲の憐憫の目だけが彼女を取り巻いていた。
「あはは……ども」
周囲にペコペコ頭を下げながらも、その足を止めない。
彼女は今、走っている。ビジネス街を猛然と。
屑籠の中のようにごった返した人混みの中を軽やかに駆ける。
右へ左へ、ワルツを踊るように、ロンドを踊るように、ジャズでスイングをするように。
軽くステップを踏みながら、軽やかに人を避ける。
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