雪の日のスピカ

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「はぁはぁ……撒いたかな?」  人混みを抜け、駅前へ出る。追っ手は来ない。 「ふぅ……危なかった」  捕まるわけには行かない。捕まったら最後。でも、まぁ……殺されはしないであろう、多分。 「ずべらっ!」  奇妙な音が彼女の鼓膜を揺すった。  列車がない空白のこの時間は、比較的人がいない。故に、この「ずべらっ!」は、ある種、気の毒なほど閑散とした駅前に、響き渡った。 「……哀れな男。まあ、あたしも人のことは言えないか」  キョロキョロと辺りを見回す。幸いにも、彼女を注視するような輩はいない。 「大丈夫……だよね?」  ホッと胸をなで下ろす。行き詰まっていた息を肺から捻り出す。
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