首途

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 銀色に輝く二本のレールを滑るように列車は進む。一定に間隔で体に伝わる振動が心地よい。  カタン、コトン。カタン、コトン。  列車の奏でる音に耳を傾ける。  カタン、コトン。カタン、コトン。  音を身体で聞く感覚。骨から響き伝わる深い音。  コンクリートでできた灰色の壁はいつの間にか姿を消し、眼下には眠らぬ都市が広がっていた。高架橋から見る、光で溢れかえった都市は、日がすっかり暮れているにもかかわらず、それを全く感じさせない。 「お嬢さんはどこまでだい?」  不意に横から声が飛んできた。  隣には年配の男性が一人座っていた。わたしが乗った駅で、一緒にこの車両に乗ったことを覚えている。  黒い背広と黒いネクタイ。そして彼の醸し出すその雰囲気が、弔事があったことを鮮刻に顕していた。  その服からは線香の匂いがした。  わたしは首を少し傾げた後に、鞄からスケッチブックと青いフェルトペンを取り出し、龍雪町まで。と記した。  彼はわたしの行動に少し戸惑ったような素振りを見せたがやがて、あぁ、そうか、うん。と、どうやら彼なりにわたしのことを納得したように見えた。
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