冬雪抄

首途

　お嬢さんも大変だねぇ。と老人は、ほんの少しその瞳に憐憫の色を添えたあとに、ゆっくりとその唇を開いた。

「お嬢さんが、つい、似ていたもんで」

――――誰に似ているの？

　わたしは、そう聞きたくて首を傾げた。

「明日香、ああ、私の娘にねぇ」

　そう言って彼は、何か遠くのものを見るかのように目を細めて、ふぅーっと、一息置いてから、お嬢さん、この老人の他愛もない昔話に付き合ってくれるかい？と、わたしに訊ねた。

　わたしがコクリと頷くと、彼はありがとうと、一言置いた後、自身の心の中の思い出の蓋を捲るような、優しい顔で語り出した。