3人が本棚に入れています
本棚に追加
明日香は生まれつき心臓を患っていた。いつ別れがくるか分からないとも言われていた。そのせいもあり、彼女の両親が事故で亡くなったとき、誰も、誰一人も彼女のことを引き取ったりはしなかった。彼女の親族さえも。
しかし、彼女の目は輝いていた。それは一際、輝いていた。
私は、その時はまだ、彼女にとっては近所の菓子屋のおじさんでしかなかった。結婚して直ぐに嫁を亡くし、再婚も出来ないでいる、近所の菓子屋おじさんでしかなかった。
彼女はよく、両親に連れられて、うちに菓子を買いに来たものだった。
私は常々子供が欲しいとは思っていた。しかし、私は死んだあいつのこと以外を愛せるほど強くはなかった。
それは雪が降り積もる十二月のある日のことだった、彼女のことが難航していると聞きつけて、頭を下げに行った。
形式上、明日香は彼女の叔父に当たる人物に引き取られていた。向こうも仕方がなく彼女を引き取ったのだろうか、驚くほどすんなりと私に明日香を引き渡したよ。
最初のコメントを投稿しよう!