首途

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 十二月二十四日。世間ではクリスマスイヴと呼ばれるこの日、わたしは遙か彼方の故郷を目指すため、と言うのは言い訳で、瑠璃君に会いに行くために北へ向かう列車に乗った。  駅の改札口には、今までいったいどこにこんなに人がいたのだろうと思うほどたくさんの人で埋め尽くされていた。  放送ではジングルベルが流れ、お土産売場には、赤い服の恰幅のよい老人を模して作られた人形がたくさん並べられていた。  今日はクリスマスイブか。と心の中で思う。  ペアルックの男女。二人で腕を組み幸せそうに歩く男女。  子供を連れた夫婦。幸せそうに微笑む家族。手をつなぐ老夫婦。  今日という日は特別。お祭りによく似た雰囲気が辺り一面に漂っている。  なんだか、わたしも楽しい気分になるのは、きっとそのせいもあるだろう。  到着の予定はクリスマス。きっとわたしにとって最高のクリスマスになるだろう。  待合室に電子音が鳴り響く。列車が到着する合図。  駅員の独特な話し方のアナウンスが待合室に響く。  わたしの旅立ちまで、もう間もなくと差し迫っていた。
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