首途

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 プシューという音を立てて扉がスライドする。扉の向こう側からぞろぞろと人が流れででくる。  しかし、それにも劣らないほどの人間が、ずらりとホームのステップに並んでいた。  わたしの持っている切符は指定席券。座席に座れないことはない。五号車から後ろの車両が指定席車両。わたしは切符に記載されている車両の前の列に並んだ。  世界が喧騒に包まれている。  家族との再会を喜ぶ若者の声。初孫との対面に歓声を上げる老夫婦。到着を喜び抱きしめ会う恋人達。  そんな中にわたし一人だけが静謐に包まれているような錯覚を感じていた。
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