Ⅰ 始まりの夢

4/5

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
―ピピピピッ、ピピピピッ 「………ん……」 遠くの方で、目覚ましの音が聞こえる。 私はそれから逃れるように、布団にくるまって、寝返りをうった。 ―ピピピピッ、ピピピピッ それでも、目覚ましの音は聞こえる。 寧ろ段々と覚醒していくからか、さっきよりもはっきりと聞こえる。 もう、ここまで覚醒してしまうと寝れない。 私はいつものことだけど少しうんざりしながら、重たい瞼を持ち上げた。 「……………」 暫く、ぼーっとしていた。 その間も、目覚ましはけたましく鳴り響いている。 ―ピピピピッピピピピッ ―ピピピピピピピピピピッッ 「あーっ!ああもうっ、煩いっ、目覚まし!!」 あまりの煩さに、私は跳ね起きて、ベッドの隣のサイドテーブルに置いてある目覚ましを思いっきり凪ぎ払った。 ……ゴッという、物がかっ飛ばされる鈍い音がした気がする。 ピシッという亀裂音も、空耳でなければ、聞こえた。 続いて、ガコッという、物が床に落ちる音がした。 「…………あ……」 ベッドの下には、液晶部分にヒビが入った目覚まし時計が、目覚まし時計から飛び出てしまったと思われる、単3電池と共に転がっていた。 「……やっちゃった……」 無惨な見た目になってしまった目覚まし時計から逃避し目を背け、私は何時も以上にやたらズキズキとする頭に手を当てた。 私は中村 実桜。 低血圧故に朝がとても弱い、高校2年生の16歳。 商店街の隅っこにある、こじんまりとした、いかにも地元の花屋さんっていう感じの花屋の一人娘です。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加