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私は彼に目を合わせないように話す。
「ご苦労様です。帰って良いですよ」
さっさと追い出そうと彼にそう告げるが、彼は私をずっと見ている。
「……会長、目が赤いぞ?」
何故……?
普段は私の顔すらマトモに見ないようなあなたが何故……?
「……気のせいです」
「いや、そう言うけど赤い――」
「黙りなさい!!」
机を思いっ切り叩いて立ち上がる。
「……分かったよ。退室すれば良いんだろ」
彼は不満そうに振り向いて立ち去ろうとしている。
「最初からそうしておけば良かったのですよ……」
彼には聞こえないように小声でボソッと告げる。
「なぁ、会長」
「……何ですか?」
まだ何かあるのですか?
早く帰って欲し――。
「……アンタ、随分変わったな。去年まではバカみたいに明るかったのに今や見る影もねぇぜ?」
…………知ってますよ。
「んじゃ、また明日な」
「はい、また明日……」
彼は扉を開けてここを立ち去った。
また一人になってしまった。
再び電気を消して、窓に立つ。
「……ウッ、グスッ……ヒグッ…………」
私は後悔と悲しみに押し潰された。
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