に、せーちゃんコイツら誰?

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その口の動きから察して内容を理解しようとするが、生憎読唇術なんてものはない。 「あの、全然聞こえないんだけど……」 「…………?」 彼女は首を傾げ、不思議そうにしている。 「…………!」 しばらく待ってみると、何か閃いたのか手をポンと叩く。 そして、どこからか取り出したメモ帳に何かを書き始める。 ……何、書いてんだろ? 〈そういや声が出ないの忘れてた〉 メモ帳にはそう書いてある。 その後も続けて何かを書き始めた。 ……まさか筆談でもする気か? 〈ここ、私のお気に入り。あなた、何者?〉 そのまさかだった。 筆談だと会話の速度が遅いんだよなぁ……。 まぁ、急ぎでもないから時間には困らないけど。 「俺は一年の野館誠吾。そういう君は?」 〈私は二年の嵯峨根美幸(さがねみゆき)。ちょっとした病気持ち〉 成る程、この人は二年だったのか。 それより、病気持ちって何だ? 「嵯峨根さんね、解った。それより病気って?」 〈変わった病気、歌う時しか声が出ない病気〉 歌う時しか声が出ない? 随分と変わった病気なんだな。
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