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梢に止まりし幾百の鴇は、過ぎゆく春を見送る花弁。
見ず散りし桜花を追うが如く、窓の外咲いた、似て非なるハルの語り部。
五月雨に溶け、夏へと消ゆ。
八十八夜、茶の新緑、通り抜けた南風。
それは、北を目指す背中を押す。
弁天橋、渡れば八国の山を通る。
川沿いに咲いていたのは、桜を知らない花不見樹(ハナミズキ)。
泳ぐ魚は水面下より、望んだ。
色違い、互い違い、お互い誓い。
桜より、実るのが遅い果実だとしても。
喰われぬ様、中身を種で詰めてゆけ。
来たる夏を越えて。
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