Second Love

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太陽はゆっくりと傾き始め、草の音がサワサワと響く。 つないでいる手のひらはキチンと温かみを持っていて、伝わる体温は身体中を巡り巡ってどこにあるかわからない僕の心を温めてくれる。 そんな気がして、唇の端を少しだけ吊り上げた。 「私は……。 ありがとう」 言葉になにかを少し含んだ後、播磨さんはそういった。 項垂れて頭を下げたその姿からは彼の表情は全く見えない。 「とりあえずはここから動こう? 連中、だんだんと勘付いてきたのか増えてきてる」 静がちらりと周りを見回す。 「一応、私の姿にはプロテクトんかけているんだけどネ」 顔をあげた播磨さんが苦々しく笑って言った。 どうやら、彼は連中に気づかれたのは僕らのせいだと思っているらしい。 だからといって今はなにもいう気は無い。 ここで彼と再び口論したって意味がない、最善策を取るしかない。 絶対に静が傷つかないような最善策を。 「さて、どうやってここから脱出しましょうかネ?」 「静にもプロテクトが使えれ簡単にいけるんだけどね……。 静、できる?」 「愚問だわ」 当然と言ったように胸を張って誇る。 いつもと一緒の静。 いつもの静? いつもの静ってなんだっけ? 「でも、どうやって脱出するのだネ?」 疑問を疑問する播磨さん。 僕はそれに解答を解答する。 「二重プロテクトです」 頭にある理想図を現実にするため、僕は言葉を選び紡ぐ。 あるときは風に載せて歌い、またある時は太陽に反射させて映し出す。 「でも勇、それをどう使ってここから出るの? 相手だって曲がりなりにも超能力者よ」 「それこそ愚問だよ、静」 そんな僕の物言いに静は少しムッとした顔になった。 赤いカチューシャが微妙ににメラメラと燃えている気がする。 吊りがちな彼女の両目が僕を真っ直ぐに、突き刺すように僕の姿を捉えていた。 「播磨さんは彼等に僕らが何処かに行くように見えるように暗示をかけてください」 それに頷いたその後、彼はどこからか取り出したオカリナを吹き出した。 無機質な白色をしたそれを播磨さんがいくら吹いても、不思議と音はしなかった。 ただ、風が強く吹き出した気がする。 「いい音色ね」 うっとりとした顔をした静が呟いた。 播磨さんが奏でるその音色は僕には聞こえない。 だけど、吹き抜ける風の中にその音色の片鱗を少しだけ感じたような気がした。
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