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彼女の眼差しが真剣になってさっき歌っていた時の美しさとはまた別に奴らの視線を集めている。
「ねぇ? あんたなに? 私達よりちょっと美しいからって調子ノらないでよね?」
誰か1人がそう言った途端に回りからそうよ! そうよ! というわめきがたちまちあがっていく。
それを彼女はどこ吹く風で涼やかに見送っているわけであって――
僕は小さく吠えた。
「隆平! 目をつぶれ!」
僕と同じく静に見とれていたと思われる彼は、初めは何のこっちゃと驚いた顔をしていたが、僕と目があってからは抗議の色も収まったらしく、固く――ギュッとまぶたをつむった。
そして、僕も同じように目を固くつむる。
すると、彼女の涼やかで凛とした一声、彼女を中心として放たれた。
たった一言。
「眠りなさい」
瞬間、風がやんだ気がした。
目を開けてみると、回りにいたオカマ――もとい同級生達は皆一様に気を失って倒れていた。
隣で素直に目をつむっている隆平に声をかけて目を開けさせる。
「……なんだよ!? これ!」
彼が見たその光景は筋肉ムキムキの変態達が気を失って倒れていて、その人の生け垣の真ん中にすくっと立っている彼女"泡沫 静"
その光景はあまりにも日常をかけ離れていて、僕には予想がついていたことだけども、彼にとっては始めて見る光景であり、言葉をなくしてしまったようである。
それに加えて、静が少し訳ありなことは察してくれたらしく、今のことに関する追求は一切なかった。
その"真ん中"の少女はこちらに向かって笑いかける。
唇がキュッとつり上がって、まだ少女のあけどなさが残っている笑み。
僕はそんな彼女を見て、重い唇を開けた。
「今の言葉、"言霊"込めたね?」
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