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問題の静は僕がそうやってのろのろと歩いてる間に数十メートルも先を歩いてる。
考え事をしていると歩くのが遅くなるのは昔からだ。
そのたびに静に歩くのを急かされてた気がする。
そして、今も。
「勇! なんでそんなにチンタラ歩いてるのよっ! 歩調ぐらい私にあわせなさい!」
そう言って長い髪の毛を振り回しながら静はズンズンと前に進んでいく。
どうやら、待ってくれるとかそういうのはないらしい。
こうしている間にも静はどんどん前へ進むのでちょっと小走り程度に僕は静を追いかけた。
「……静、待つくらいしてよっ」
「嫌、なんでこの暑い中待たなきゃなんないの?」
僕の目の前で艶やかな髪が右左に揺れて静はどんどんと前へと進んでいった。
……静が僕に対して我が儘なのは昔からだけどもね。
たまには僕も静の焦る顔を見たい。
そう思った僕はポツリ、静の横で呟いた。
「あーあ、明日隆平と一緒に映画館とか涼しい場所に行こっかなー?」
その言葉を聞いた静の肩がピクリと跳ねた。
「どうせなら隆平に頼んで女の子たくさん呼んでもらったり――あ」
続けて言ってたその言葉の途中で静がパッと駆けだしていった。
そのスタートダッシュの綺麗なこと。
まぁ、途中で振り返って子犬のような目で僕を見てきたけど。
「大丈夫だよ、嘘だって」
小走りで駆け寄り、苦笑しながら言う。
どうやら効果はテキメンだったらしいです。
うっすらと目に水を溜めた静は疑わしそうな瞳で僕を見つめてくる。
「ホント?」
「本当だってば」
「じゃあ、私と映画館に行ってくれる?」
そうきたか。
大きな黒色の瞳、赤いカチューシャが艶やかな黒髪の上で赤々と輝いている。
そして、下からジッと見つめられていて――
――断れるはずがない。
「当たり前だろ?」
「絶対? 絶対だからねっ!」
まるで子供のように瞳を輝かせ、嬉しそうに飛び跳ねる。
長い髪がブンブン揺れてまるで一つの鞭のようでした。
その後、僕らは時間等の約束を決めて解散となった。
そして、向かいの家に静が消えるのを見送ってから思い立った事。
――明日、何着ていこうか?
割と死活な問題です。
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