First Love

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そして、今日。 今日は静と映画に行く日だ。 夏だというのに朝はまだ割と涼しく、やっぱり蝉の声が五月蝿い季節。 彼らの騒々しい大合唱を聞いていると、もはや夏を連想するしかない。 どうも、朝からちょっと悩み事に入ってます、山崎 勇です。 まぁ、昨日静と映画を見に行くことになったのですけどね。 今日、何を着ていけばいいかなーって……。 昨日からずっと悩んでいる始末です。 四畳半くらいの僕の部屋には大量の服が広がっていて―― こんな感じに悩むのって女の子だけですよね。 あぁ、ホント僕女々しいですね、死にたい。 外見が女みたいだとしても、内面は男らしくなりたいのに……。 そんなこんな考えていると、不意にインターホンが機械的な電子音を告げた。 慌てて受話器をとると、その向こうにはいつも通り赤いカチューシャを着けた静。 「勇! 迎えにきたよーっ!」 どうやら、朝から元気がいっぱいらしい。 適当に相づちを打った僕はその場しのぎにテキトウに服を見繕った。 ジーンズに黒いインナー。 そして明るい色をした新品の上着。 じっくり選んでる時間はもはや皆無だったので、素早く着替え、部屋に散乱した服をクローゼットに詰め込む。 よし、行けるな。 そう思えるまでに部屋はさっきまでの服地獄が綺麗に片付け――もとい、隠されていた。 これ以上静を待たせるのも悪いので僕は部屋を後にして、静の元へと向かう。 玄関で靴を履いた後、僕は大きく息を吸い込んだ。 大丈夫、今日も世界は回ってる。 Are you ready?
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