prolog?

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世の中なんだってある。 政治家の汚職事件から児童虐待、知り合いが彼女を作ったとか卒業したとか、ピンからキリまで。 幽霊だって超能力だって確実にある。 あってしまう。 だって今、僕の目の前で。 この僕――山崎 勇(ヤマザキ ユウ)の目の前で確かに起こっているからだ。 腰ほどまである艶やかな黒髪、少しつり上がったガラス玉のような黒い瞳。 頭の上で燃え盛るように笑っている赤いカチューシャ。 白と水色が可愛らしい水玉の部屋着。 そんな風貌の僕の幼なじみ、泡沫 静(ウタカタ セイ)が赤く艶めいた林檎を宙に浮かせているという、世間一般の普通とはかけ離れた見慣れた光景が広がっているからだ。 プカプカと浮いているそれは、まるでそこだけ無重力であるかのようにさえ思えて仕方が無い。 その上、彼女は林檎を長い指で優しく突ついてこちらに飛ばしてくるのである。 明らかに普通じゃない、異常。 この状況を作りだしている彼女も、赤い赤い林檎も、慣れきっている僕も―― ――全部全部異常。 たけど、この異常が少し変わってしまう一連の出来事があった。 それは、僕が高校一年目の夏休みのことである。
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