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とりあえず、また静の顔をのぞき込もうとするが、今度は目さえも合わせてくれず、僕の顔の逆方向にプイッと向かれてしまう。
意地になってるのだろうか?
うっすらと笑みがこぼれる。
そして、また僕が静の顔を覗こうとすると、足に強烈な痛みがハシった。
それはまるで、スネを金槌のような鈍器で叩かれたような痛み。
その感覚は一瞬にして脳に伝達され、僕を痛みで悶えさせた。
片足でピョンピョンとウサギのように跳ねながら僕は泣き叫ぶ。
「――静!、念り――ぎゃにゃぁぁぁあああ!」
今度はもう片っぽの足に痛みが。
言葉にならない悲鳴が喉元を震えさせる。
痛みの感覚がもう一度、僕のスネから頭へと即座に変換されて僕を悶えさせた。
今、僕の魂が口から出て行きかけた気が……。
そんなこんなな中、静は僕が悶えているのなど気にせず、チケットを二枚購入。
もちろん、例の痛いラブコメ臭がするものチケットだ。
僕はいつの間にやら静の手にあった僕の財布をもぎ取り、沈みがちに溜め息を吐いた。
「まさか、僕の財布まで取っていたなんてね」
「しょうがないじゃない。 私はアレが見たかったんだから」
やれやれといった感じで呟いた静は僕の分のチケットも渡してきた。
「……まだ足が痛むんだけども」
実際、僕のスネはジンジンと痛み、神経が悲鳴をあげている。
「Mだから大丈夫でしょ? それに、早くしないと間に合わないよ」
まさに、天真爛漫+我が儘っていう最強に近いスキルを持っている彼女に僕の出る幕はなかった。
まぁ、こうやって振り回されるのも悪くないか。
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