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まどろっこしい映画の宣伝。
ビデオカメラの着ぐるみを着た人によるやけにインパクトのある盗撮への注意。
毎度のお約束のように映写機からスクリーンへと刻まれる。
そして、"東映"の文字がスクリーンに写されて荒波溢れる日本海であろう海が華々しく映し出される。
そして、やけに頭に残るBGMから始まり、その映画のタイトルがポップで可愛らしい文字で表れた。
"RAINBOW GIRL"
そして、主人公である人気俳優の男の人のモノローグから話は始まった。
***
スクリーンが……。
スクリーンが涙で滲んで見えないよぉ!
な、なんて素晴らしい物語なんだ。
僕はこの映画を見誤っていたらしい。
つんざくほどの感動が干物のように乾いていた涙腺を潤わせ、涙を溢れさせるさまはまるで泉。
その対になるかのように隣に座っている静は氷のごとく冷めた、凍てついた表情をしている。
その両の瞳からは何かしらの感情を伺うこともできなく、顔には幾重もの縦線が刻まれていた。
一体何が不満だというのか?
僕にはそれがわからない。
こんな……、こんな素晴らしい映画を目の前にしてあんな冷めた表情をしていられるなんて、もしかすると静は宇宙人のではないだろうか?
スクリーンの中では主人公である人気俳優とその仲間である女優さんや同じ俳優さんが慌ただしく動いていた。
物語もそろそろ終盤。
僕は意識をスクリーンに持って行かれてしまった。
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