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「あれは実は――」
「告白したのね? 勇君!」
僕は誤解を解くべきと口を開くが、その先の言葉はどこからともなく聞こえてきた声に阻まれた。
「さすがね、勇君! やはり私とダーリンの息子だわ!」
弁解する暇もなく熱烈と言葉をかけてくる女性、彼女は僕の母である。
「帰ってきましたのね! おばさま!」
予期せぬ来訪者に静の少しつり上がった目はキラキラと輝いていた。
「お久しぶりね、静ちゃん。 そしておめでとう!」
「あの――」
「ありがとうございます、おばさま! いつから日本に帰ってらしたのですか?」
「その――」
「さっき帰ってきたばかりなのよ! 空港についたらダッシュで帰ってきたわ。 そう、愛する我が子に会うためにね!」
声のマシンガンで弾幕をはり、僕の言葉を遮っていた母はクルリとこちらへ向き、標的を僕にロックオン。
次の瞬間、少し肉のついた二対の腕で僕は抱きしめられていた。
「ちょ……、止めて! 暑いからそんなにくっつくな!」
「いいじゃない、家族なんだから」
「アッー!」
少し汗を掻いている肌同士がくっつきとても暑苦しい。
そんなことを実の母からされているのだから身の毛がよだつレベルではない。
僕は無理やり引き剥がすことにしましたとさ。
「無理やり剥がすなんて勇君、反抗期を迎えたのね! でも大丈夫、安心して。 どんな勇君でもお母さんはちゃんと見守ってるから!」
実の母である彼女は子供のような無邪気さを持っているところは静にも通じるところがあるが、静と違うのは果てしなく強く打たれく、ひたすらポジティブなところである。
静だけでもすでにお腹いっぱいであるのに、この上に母までこられると心底――
「――鬱陶しい」
「静ちゃーん! 勇君が酷いこと言ってくるー!」
僕が口に出した言葉はどんな言葉でも母にとっては甘い蜜なのだろう。
鬱陶しいなどと言われつつも彼女は笑顔で静へと話しかけた。
「おば様ー、大丈夫ですよ。 私がいますからねー」
そう言いながら、まるで子供をあやすかのように母へ接する静を見て、僕の頬は自然と緩んだ。
「あ、そうそう。 2人にはお土産があるのだよー!」
「お土産?」
「さすがおば様ー!」
感激した静に抱きつかれながらも取り出したそれは二つの長方形の紙だった。
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