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太陽光と笑顔が溢れる広場で小休止。
子供連れの方々の方からなんとも言えない暖かい笑い声が聞こえてくる。
そんな中、男が一人で歩くなんてこれ以上の拷問があるだろうか?
一人で遊園地に来た根暗野郎みたいに思われるだろう。
ほら、声だって聞こえてくる。
「ねぇ、お母さん? なんであの女の人は一人なの?」
女の人? おかしいな、周りに一人でいるのは僕一人なのに……。
「ほら、見ちゃだめよ。 可哀想でしょ?」
「うん!」
「…………」
お弁当にいそしむ彼らからの視線から逃げるようにか僕はベンチへと向かった。
座った白塗りのベンチは太陽をたっぷりと浴びているはずなのにまだ少し冷たく、心地が良い。
しかし、静は隣にいなかった。
わざわざ彼女が座るスペースを開けた座り方をした僕。
空けたその場所に座る人はいないためにかそんな行為をした僕は僕自身に対してむなしさを覚えた。
「まさか、本当に逃げられるとは思わなかったな」
ひとりでに呟いたその言葉にも、胸を渦巻く思考にも割って入ってくれる人はいなかった。
ただ、太陽の光が痛いほど突き刺さって熱かった。
汗ばむ体はどこか涼しげな場所を求めている。
そして水分補給もだ。
だが、僕という思考体はこの場所から動こうとは思わない。
それどころか、何故かこの場所にいれば静に会える気がしていた。
確信めいたものはないけれどそんな予感が。
たまにはそんな予感にも従ってみたい。
僕自身による僕自身の選択。
***
何分たっただろうか?
静とはぐれてから。
10分?20分?
それとも1時間?
永遠にも感じられたその時間。
実際には10分だろうと僕にとって永遠に近く、とても長くとても――――
彼女がいない世界、中心を失った世界。
そんな世界は僕にとって退屈だった。
一度知ってしまったらもう二度と普通には戻れない。
焦がれ、渇望し、彼女を欲する。
しかし今、どれだけ求めようとも彼女は隣にはいなかった。
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