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彼女が覗く、僕の心を。
記憶を、中身を。
その目で、能力で、視線で。
彼女の黒い瞳は透き通って見え、僕の目が薄くそこに映っていた。
そのまま見つめ合って数秒たっただろうか。
その間、僕は無心をキープ。
静とずっと見つめ合ってるなんて心臓に悪すぎる。
そして、満足いくまでに覗いたのだろうか彼女は呟いた。
「嘘、本当に言ってないんだね」
「当たり前だって。 なんで静に嘘つかないといけないのさ?」
何故そこまで嘘だというのだろうか?
しかし、どちらも本当のことを言っているのだとしたらおかしなことになる。
「ほんとだよね、2人とも公園にいたのに会えないなんてねー」
「……ほら、こうやってナチュラルに思考に介入する人相手になんで嘘をつくんだよ」
こうやってボソッと皮肉を言ったって、彼女はえへへって照れたように笑うだけだし。
何かと色々と静には適わない気がする。
誉めてるわけじゃないのにね。
「まぁ、そんなこと気にしない気にしないー」
サラッとそう言ってアハッと笑う静は太陽の光のせいか輝いて見えた。
時折吹く爽やかな風が僕らの間を吹き抜ける。
揺れた彼女の髪からは優しい、心地の良い香りがした。
「……でも、なんで会えなかったのだろうね?」
僕は独り言のように空へと呟く。
「んー。 考えられるとしたら平行世界とか?」
顎を人差し指に当て眉をひそめている静がおもむろに言った。
そんな仕草の一つ一つが愛らしく見え、心臓はさっきから高鳴ってばかりだ。
それにしても平行世界か……。
超能力があるならばそんなこんななこともあるのかもしれない。
「平行世界か……」
「なにその馬鹿にした感じー」
「馬鹿にしてないって! ただ確かにあり得る話だなって」
彼女にジトーッとした目で見つめられたために必死の弁解。
多分、嫌われたりしたら僕はもう生きていけない。
「ほんとにあるんだからねっ! 平行世界は怖いもんなんだよっ!」
「わかってるってー。 とりあえずは会えたんだし一段落して」
「……絶対に信じてないんだからっ」
「信じてる! 信じてる! 平行世界とか凄い怖い!」
僕は必死になだめにかかるが彼女はまだ満足になってないらしく、うーっと呟くと透明な空を見上げ始めた。
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