Second Love

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黒髪のボサボサ頭をかき混ぜながら、男はヘラヘラと笑った。 「ま、私にも色々事情があるわけなのヨ。 詮索しないでくださいな」 「……別にいいですけど。 えっと――」 「私の名前は播磨だヨ」 「――播磨さんはなにしにここへ来たんですか?」 「君達はいいネ。 いかにも青春!って感じデサ」 ヘラッと笑って彼はそう言った。 が、その言葉は質問の答えとはかけ離れているばかりか会話からすらかけ離れていた。 確かに詮索しないでとは言われたが、彼については名前しかわかっていない。 まるで、何かに追われていたかのようにボロボロボサボサの格好。 『詮索しないで』という言葉。 少し訛っている言葉使い。 端々から訳ありのような、訳ありじゃないようなオーラがでていてどうしても気になってしまう。 そう思い巡らせ一人悶々と押し黙ってしまった僕に対して、まるで心のうちを見透かしたように播磨さんは笑った。 「詮索しないって約束でショ?」 遠い目をして明後日の方向を見つめる播磨さん。 その切れ長な瞳の中にはなにも映っていない。 暗く、闇のようなその眼。 僕はその目からさえも何もつかめなかった。 まだ太陽は空高く真上に位置しているが、少しずつ世界の淵に傾きだしていく。 額から顎へと流れる汗が僕らのいるテーブルへと吸い込まれていった。 二人と一人、合わせて三人。 僕と静が播磨さんと向かうように座っている。 白いテーブルの上には片付けられたお弁当と鞄。 座っている長椅子もこれまた白く、近いぐらい隣にいる静からは冷たい体温が僕に流れ込んでいた。 「……勇」 「なに? こんな小さな声で」 「私、あの人怖いの」 不謹慎なぐらい近い距離。 彼女の囁いたその言葉は僕の心臓をさらに速めさせることになる。 「私の力でも覗けないの。 こんなの初めてだよ」 「静、落ち着いて。 大丈夫だから、僕がいる」 「きっとあの人、人間じゃない。 得体のしれないなにかが人の皮を被ってるの」 「静、大丈夫。 大丈夫だから。」 彼女は自らの超能力を嫌いながらも、多大な自信を持っている。 人見知りで心配性な静が得体の知れない人間を覗くことは彼女にとっては当たり前のことなのだろう。 そうやってずーっと生きてきた。 だから、本当に初めてで戸惑っているのだろう。 僕の手をつかんだ震えた手の平から、彼女の不安が痛いぐらい伝わった。
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