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そんな僕らの様子を見て、播磨さんはクスクスと笑う。
「君達は仲がいいネ。 羨ましいヨ、皮肉にもサ。」
播磨さんの中にある何かをほのめかす言葉。
自らそれをさらけ出すのと、詮索しないという約束。
矛盾する二つを手の内に抱える彼はどのように扱ったらいいのだろうか?
そう独想する僕の目を見ていた静が不意に言う。
しかも、囁くような音量ではなく相手にまで聞こえるような音量で。
「……勇。 これはね、地雷質問を踏まなければいいのよ」
「そういう問題じゃ……」
怖い相手にあえて挑む、そっと覗くという行為ではなく。
それが今まで通りにいかない相手への彼女なり対処法だった。
「いいヨ、聞いてあげる。 答えるとは限らないけどネ。」
播磨さんはそう言うと目を細め、去りゆく風を頬で感じ始めた。
「どうして遊園地に来たの?」
「ないしょ」
「なんで倒れてたの?」
「ないしょ」
「なんでアナタには超能力が通じないの!」
「……へぇ」
静が立ち上がってそう怒鳴るように叫ぶと、播磨さんは細めていた目を見開いた。
その目はまるで、新しいオモチャを見つけた子供のようで。
その目はまるで、人間と契約した悪魔の目のようで。
そして、楽しそうに吊り上がった口で言葉を紡ぎ出す。
「……まさかね、こんな事を言う子には見えなかったんだけどな」
「あなた、何者なの?」
「私は播磨。 それ以上でもそれ以下でもないサ」
「答えになってない!」
「答えになってない? 答えなんてないんだヨ。 どこにもネ?」
いきなり醸し出す異常な雰囲気に僕は一言も発せなかった。
それどころか足は震え、目は泳ぎ、喉はカラカラに乾く。
握ってる彼女の手すら恐ろしく感じて、何回も離しそうになった。
それでも、この状況に静が立ち上がってる。
得体の知れない相手を一生懸命に探ってる。
その事実だけが僕を奮い立たせた。
「播磨さん、アナタ。 何がしたいんです?」
「何も」
「何をもとめてるんです?」
「何も」
「何に追われてるんです?」
「何も」
椅子から立ち上がり目を合わせ、僕らは向かい合う。
彼のその切れ長な黒の瞳には僕が映っていて、僕の瞳には彼が映っている。
僕らの間を通り抜ける風が、だんだん強くなっているような気がした。
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