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「容姿さえわかれば探せるだろ?」
僕はそう静に問いかける。
すると彼女はわざとらしく小首をかしげると、さぁっと言って薄く微笑んだ。
「何をそんなに意地悪してるんだよ」
はぁーっとため息をつく。
ちらりと播磨さんのほうを伺うと、少し困ったような顔をしていた。
「私は別に探してあげてもいいけどさ。 それだとしても、この人が最初にそのことを出し惜しみした訳がわからないの」
「私はただたんに、巻き込みたくなかっただけで……」
彼は少し考えてから、そう独り言のようにつぶやいた。
だけれども、巻き込みたくない……なんて理由、少し僕には理解できない。
とても大切な人だと彼は言った。
大切ならば何にかえても守りたいものではないのだろうか?
でも、僕だって……。
「巻き込みたくない? 巻き込まれるなんてなれっこですよ。 なんたって僕の隣にはいつものごとく、トラブルメーカーがいますから」
胸を張ってそう言うと、隣に座っている彼女からジトっとした目で見られる。
「もしかしてそれってわたしのこと?」
じ、自覚がーー
「ーー自覚があったんだ」
「だ、大正解」
隣を見ると僕の思考を遮った彼女は真っ直ぐと前を向いていた。
その瞳はキラキラとお昼の太陽を反射して、ボサボサのヨレヨレの播磨さんの姿をハッキリと映していた。
人は変わる。
僕も静も、誰もかも。
わかっていたつもりだった。
だけど、それがこんなに怖いことだとは知らない。
いつか、彼女がまるで知らない彼女になってしまう可能性があることなんて僕は知らない。
「助けてください、一緒に探してください」
播磨さんがすくっと頭を下げたのを見ると、僕らは顔を見合わせた。
こういう時ほど僕らの息はピッタリだ。
そして、互いに頷いて見せると、息をそろえてーー
「当たり前」
夏の風に言葉を散らした。
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