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風が鳴り止んで、静の歌も終わる。
重なり合ったコーラスは空気を震わせて、人々の耳へと入り込んだ。
「できたよ」
褒めてと言わんばかりに彼女は満面の笑みでこちらを見た。
それに答えるように僕はその頭を撫でた。
サラサラな髪の毛を手でクシャクシャと掻き回し、その感触を手のひらに押し付ける。
すると静はえへへっと目を細めながら笑い、こちらへ手を差し伸ばした。
「手、繋ごうよ!」
「……静。 播磨さんもいるんだよ?」
「わかってるよ! だから勇はもう一方の手であいつと手を繋ぐのだ」
「話が見えてこないんだけど……」
播磨さんの方を見てみると苦笑して肩を竦めていた。
「そうやって手をつなぐなんてまるで家族みたいだネ?」
「そう見えてもらわないと困るわ、だって私達は今、子連れのお父さん、お母さんに見えているんだもん」
へらりと笑って静が言う。
そして、クルリと回転して再びこちらに手を差し伸べた。
「Sall we dance? なんちゃって!」
白くて華奢な、だけどとても柔らかいその手のひら、それを僕はギュッと握りしめた。
そして、ため息をはぁーっと吐く。
やっぱり静の思ってることなんて全然わからないや。
「そういうわけなら仕方ないよネ?」
苦々しく笑いながら播磨さんがもう一方の手を取る。
……ちょっと待て。
静と播磨さんと手を繋いでる僕、つまり真ん中にいる僕。
家族で真ん中ってことは……。
「静、なんで僕が子供の役なの?」
「不可抗力だよ、仕方ない仕方ない」
「何が不可抗力なんだー!」
噛み付く僕に静はめんどくさそうにポツリと呟いた。
「にぶちん」
「まぁまぁ、君はいわば両手に花状態なんだヨ? 我慢してくれ」
「どこに片方が男の両手に花がありますか?」
「まぁ、私は意外と顔がいいからネ。 花と言い得ないこともないヨ」
「播磨さん、そんなキャラでしたっけ?」
「はいはい、もういいでしょ? だいたい今からどこに行くの?」
静がはっきりとめんどくさそうに言う。
憂鬱そう、いや機嫌が悪そうと形容するべきか。
まったく、何が静の機嫌を損ねたのやら……。
今から行くべきなのは人が探しやすく、なおかつ話も邪魔されない場所。
それだとしたらやはりーー
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