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***
カラカラと回る大車輪。
蜘蛛の巣のように赤く、太い糸が張り巡らされ、クルクルクルクルと決まった周期で回る。
そして、その先っぽについているこれまた赤い個室に僕らはいた。
「それで? 捜しているのはどんな人なの」
目の前でやはり赤いカチューシャをつけている静が尋ねた。
「えーっとネ。 彼女はネ……」
少し照れたかのように播磨さんは頬を赤らめた。
何故、この状況で照れるのだろうか?
いや、ただ恥ずかしいことを思い出したのかもしれない。
彼の胸中なんて超能力を持っていない僕にはさっぱりわからなかった。
「……彼女はいつも黒い服を好んで着ていてネ。 それはもう、黒づくめの組織よろしく怪しい格好だったヨ。」
僕の対面に座った播磨さんはもの鬱げに長いまつ毛をパチクリとさせた。
「だけどネ、必ずどこかに一部分、黄色が入ってたんだ」
黒づくめで一部分黄色か……。
なにか、静に通じるものがあるような気がする。
僕はそう思って彼女の頭についている赤いカチューシャを見た。
太陽ね照らされ、赤々と輝くそれは静の黒く、艶やかな髪に映えていてとても綺麗だった。
「静、探せる?」
「やってみる」
彼女はそう言うと、少し吊り上った瞳をパチリと閉じ、大きく息を吸い込んだ。
ゆっくりと、ゆったりと、彼女が深呼吸をする度その並々な胸は揺れて僕は目が離せない。
播磨さんは播磨さんで窓から外を憂鬱そうに眺めているし、静かな室内には彼女が深く吸い込み、吐き出す呼吸音以外音がなかった。
精神統一が終わったのだろう、静がパチリと目を開ける。
どこか遠くを見つめるその瞳の中はどこまでも透き通ったように真っ黒だった。
幾分流れただろうか、シンクロしたままの僕と静の手のひらの表面にはジワリと汗が広がり、冷たかった彼女の手は人肌へと温度を戻す。
「いない」
不意に彼女がそう言った。
正しく、なんの言い違いもおきようもないたった三文字。
明らかにそう言い切った。
「どういうことだヨ!? 彼女と私は確かにこの遊園地に逃げてきた。 彼女が私を置いて逃げるはずもない! 何かの間違いだヨ」
立ち上がり激しく静に言葉で噛み付く彼。
ありえないと言わんばかりに顔を紅潮させ、切れ長なその目は眼光の鋭さを増す。
「播磨さん! 取り乱さないでください。 また奴らに気がつかれます」
「だって彼女は……」
彼はストンと腰を落とした。
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