Second Love

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怒りからか絶望からかワナワナと震える彼。 先ほどまでスウェット姿だったと思えば今はスーツ姿だ。 僕もいつのまにか暗示にでもかけられたのだろうか。 彼はそれを違和感なく着こなしていたのでさほど気にならなかった。 「それじゃ、彼女は……。 もうーー」 崩れ落ちた播磨さんはカラカラに乾いた言葉を吐き出す。 「落ち着きなさい、落ち込むことなんて一人でもできるわ。 大切なのは今よ」 静は彼を見下ろして言う。 傷口に塩を塗りこむように、トゲトゲとした言葉を彼に送った。 僕は彼になにも言うことはできない。 もし、静がいなくなったとしたら彼と同じようにならないという自信がなかった。 「どうします、播磨さん。 逃げますか? もう少し探しますか?」 「私はーー」 顔は蒼白、目は死んだ魚のよう、小刻みに震える体にパクパクと空虚を刻む唇。 「私はーー」 「さっきも言ったけど、見苦しいわよ!」 怒号が静の赤い口から発せられる。 雷がなったかのような迫力に僕の全身には鳥肌が立ち、驚きで宙に尻が浮かんだ。 「彼女がいなくなったらなんなのよ! どれだけ大切なものがなくなったのよ!? 少なくとも彼女は生きてはいるし、あなただって生きてる。 生きてりゃまた会えるわ! 」 「でも、もう組織に……」 「組織がなんなのよ! 貴重人材を何の理由もなく除去するなんてしないわ。 捕まっていたら助けにいく、先に逃げて行ったなら追いかける! それでいいじゃない!!」 静が鬼のような形相で怒気をはなった。 これが播磨さんだからか。 もし僕が同じことを言っていたら、彼女はなんて言ったのだろうか? 僕は場が一息ついてから言う。 静はまだ顔を真っ赤にさせて怒っていたし、播磨さんもブルブルと震えていた。 「それで、まださがしますか? 逃げますか?」 「私は……。私はーー」 彼は呟いた。 呟いた、答えを。 僕にはなにを言ったかはわからなかったけれども、静が満足気に微笑んでいたからいい答えだったのだろう。 僕もその答えを聞きたくて耳を澄ましていたが、やはり意味がなく個室の外の喧騒以外はなにも聞こえなかった。 個室は頂上を大きく過ぎ、ゴールへの道のりを歩んでいた。 地面へとどんどん近づいているから周りの音が聞こえるのかもしれない。 人の声、ポップな電子音、機会の駆動音。 この個室を降りるのはもう数分後のことになりそうだ。
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