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「ここままじゃいまずいわ」
僕が理由を聞くと、静は目を細めてから言った。
「ここに私たちがいることがばれてる」
「またデスカ……」
困ったように呟いた彼がまたこちらを見てくることからすれば、こちらがまた悪いと思っているらしい。
播磨さんも播磨さんでメンタル面の弱さとか色々あるのにね。
まぁ、それはいい。
このまま、個室を降りたら一発で播磨さんだと、わかってしまう。
暗示はもう解けているみたいだし、もう一度かけるにも時間がない。
「どうやって突破しようか……」
「あれ、今日はいつにもなく好戦的ね」
ポツリと呟いた僕に対して静がサラリと返す。
もしかしてこれは皮肉なのだろうか?
「仕方なくだよ、仕方なく。 どうやってもいいアイデアが浮かばないの」
「じゃあ、今回はテレポートできるかどうか聞いとかなくてもいいのかな?」
小馬鹿にした態度で静が笑った。
険悪な雰囲気が個室の中を駆けぬける。
それにしても、静が人を馬鹿にするなんて珍しいことだ。
先程の播磨さんに喝をいれたのは別問題として、静が人を馬鹿にするのなんて一年に一回見れるか見れないかだ。成長とでもいうのだろうか……。
嬉しさと少しの胸騒ぎが胸を掠めた。
だから、そのまとわりついてきた不安をそのまま吐き出すことにする。
「そういえばさっきお化け屋敷に入った時、開始数分でテレポートのごとく何処かに消えてったけど。ーーもしかしてテレポートできるようになったの?」
「あれは…… 。 あれは、あの黒猫が呼んでいるような気がしたのよ!」
小馬鹿にした態度から一変。
小馬鹿にされた静は顔を少し赤らめて反論してきた。
「……君たち。 そんなことやっていてアイデアの一つでも思い付いたのカ?」
播磨さんまでもが小馬鹿にしたような顔で言ってきた。
彼ももしかしたらこのやり取りに入りたいのかもしれない。
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