Second Love

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観覧車の下で今か今かと待っていたのは遊園地の係りの人ーーではなく、黒い帽子をかぶった二人の男だった。 階段を上ってその通路となりつつ乗り場の入り口となっているそこに待ち構えていた。 「播磨要一、発見」 「播磨要一、捕縛開始」 彼らは一人でにそう呟くと、手をこちらに伸ばしてきた。 どちらがどっちを言ったのかはわからなかったが、今ここでやるべきことだけはわかっている。 相手がどんな超能力者かはわからない。 しかし、そんなことは今の僕には関係なかった。 目の前にいる男へ向かっての体当たりを繰り出す。 全体重をかけて、一撃。 肩を通じて男の揺れ動く重力と人並みの体温が伝わってきて、離れていく。 ぐらりと揺れたあとその体はそのまま後ろ向きに後退し、柵にぶつかって地面にひれ伏した。 そして、もう一人。 もう一人の挙動を確認するため、横を見る。 そこにはーー膝から崩れ落ちた男がいた。 「さぁ、行こうよ。 勇」 そう言ってニッコリと微笑む彼女。 倒れている男など至極どうでもいいように、まったく関係ないように。 見向きもせず、嘲笑いもせず、彼女は言った。 そして、個室の前で倒れている男をひょいと避けて箱から出てくる静。 「さて、どこに向かおうか?」 「どこって言ってもネェ……」 と、静に続いてだ出てきた播磨さんが苦笑する。 彼の目線は僕を、通路の柵を超えて向こうへと向けられていた。 それにつられて僕も振り返って後ろの風景を見てみる。 確かに、思わず苦笑してしまう光景だ。 「まずはここを抜けなきゃねー」 そう静が軽く言うが、そんな簡単なものではない。 黒い帽子に黒いスーツ。 夏に着るものとしてはいささか暑すぎるはずだ。 しかし、そこにはそれを身にまとった男達ーー男とは決め付けることができないのだが、男達が沢山ひしめいていた。 ワラワラと動く黒い物体達。 そう、これはまるでーー 「ゴキブリみたいだ」 「……なるほど、言い得て妙だネ」 彼は苦々しい顔のまま、クスリと笑う。 「仕方ないよねー、仕方ないね」 そう呟いた静がさらに続けた。
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