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なぜか遊園地の中にある雑木林の中で僕らは向かい合う。
木漏れ日が僕らを照らし、僕らに陰を作る。
太陽は傾き始めたようだったが、気温は一番暑い時間帯だ。
「静、君は超能力者だ。だから、力に溺れちゃいけない」
「私はただーー」
「僕を守りたかった?」
静が先に言うであろうことを僕は先に言葉にする。
それに対して大きく目を見開いた彼女はポツリと呟いた。
「……そうよ」
「その気持ちは嬉しいよ。とっても嬉しい。ありがとう。でもね、僕が守りたいのは静なんだよ」
彼女の手を通して振動が僕に伝わる。
なるべく言葉は選んで言っているわけだが、ガラスのハートである彼女の心にはこれでもキツイのかもしれない。
「だからね、静が力に溺れたり傷ついたりする必要はないんだよ?」
諭すようにあやすように僕は言う。
それでも、傷がつくのは避けられないのだろうか?
触り合った手のひらで確かめ合う僕らは酷く不安定だ。
欠けてはいけないものとして、互いを埋めあっている僕らは酷く不恰好だ。
もしかしたら、その欠けてはいけないものが僕じゃない他の誰かでもいいんじゃないか、と思った僕は惨めだ。
そして、彼女は儚かった。
「勇はさ、きっと誰とでもうまく関われる人なんだよね」
夏風が強く木々を鳴らす中、彼女は言う。
「でもね、私はうまく人と接することができない」
思いつめたような静の顔。
それを見ていると酷く心が傷んだ。
「異形なんだよね、私は。 やっぱり、人とは違うんだよね」
次第に顔はうつむいていき、艶め
かな黒髪が風になびいた。
傷ついてしまったのか、僕の言葉で……。
わからない、彼女の気持ちが。
知りたい、彼女の気持ちが。
僕は唇を噛み締めて眉をひそめた彼女の名前を呼んだ。
そして、繋いだ手をこちらへと引き寄せる。
華奢な肩と真っ赤なカチューシャが僕の目と鼻の先までやって来た。
「静、落ち込まないで。 いつも通りでいいんだよ。 肩の力を脱いていこう?」
そう言って抱きしめる。
震えた身体に手を回し、サラサラの頭を胸にうずくまらせる。
そうやって、僕は彼女と影を一つにした。
早やかな風の中、伝えあう体温や聞こえてくる吐息。
その彼女の一つ一つが彼女を伝えてくるんだ。
繋がっているから伝えられる。
繋がっているから分かった気になる。
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