6636人が本棚に入れています
本棚に追加
/533ページ
「奏ちゃんの手、すっごい臭かったよ! 本当にげんなりした! じゃあね」
“手が、すっごい臭かったよ”
“臭かったよ”
“臭かっ……”
クソ生意気お嬢様の言葉が、頭に何度もrepeatされる。そして俺は素直に、水道の蛇口を捻り、石鹸を使って念入りに洗う。
嫌な過去を洗い流すように。心の傷を癒すために。
「って……何傷ついてんだ、俺は」
独り言を言いながら、ハンカチーフで手を拭いた後、机の中に閉まってあったスルメに手を伸ばす。
.
最初のコメントを投稿しよう!