3.悲しみの奏ちゃん

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「奏ちゃんの手、すっごい臭かったよ! 本当にげんなりした! じゃあね」 “手が、すっごい臭かったよ” “臭かったよ” “臭かっ……”  クソ生意気お嬢様の言葉が、頭に何度もrepeatされる。そして俺は素直に、水道の蛇口を捻り、石鹸を使って念入りに洗う。  嫌な過去を洗い流すように。心の傷を癒すために。 「って……何傷ついてんだ、俺は」  独り言を言いながら、ハンカチーフで手を拭いた後、机の中に閉まってあったスルメに手を伸ばす。 .
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