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鬱蒼と生い茂る草木を避けながら、一人の男が山道を進んで行く。
何かに導かれるかのように、その足取りは迷うことなく真っ直ぐで、細身の体は疲れを知らない。
やがて、男の足が、小さな古い祠の前で止まる。
「あった……!」
男が祠に手を掛ける。
その瞬間―――――!!
「うわぁっっっ!!!!」
眩しい光りが祠を包み、男の体が弾き飛ばされた。
あまりの閃光にしばらく目が眩む。
そして、男は正気に戻る。
「あれ…?俺…何やってんだろ…?」
しりもちを着いていた体をゆっくりと起こし、辺りを見渡す。
「地層のデータを採取しにきたんだっけ…。何でこんな奥まで入って来ちまったんだろう…。」
首を捻りながら、来た道を戻る男の背中では、祠が静かにたたずんでいる。
祠の下の土からは、湯気のような白い水蒸気がユラユラと立ち上がっていた。
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