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違う……
私はそんな言葉いらない…。
「………そう……おめでとう」
もういらない…
先生以外、何もいらない…。
ママなんて嫌い。
「ママ………私、コンビニ行ってくる」
単なる口実。
ここにいたくないから逃げ出した。
「あら……じゃあ、泰ちゃんも一緒に行ってあげて?あ、ついでにママにヨーグルト買ってきて」
財布から出したお金を私に渡して、ママは水城先生の隣に座った。
「2人を待ってる間、ラブラブしてるから♪」
―――ズキッ
心臓を鷲掴みされたように痛み、息が止まりそうになる。
「あまり…遅くならないようにするよ」
泰ちゃんは私の代わりにそう答えて、私の手を引っ張って玄関へ向かった。
「……泰ちゃん。助けて…」
自分でもわかるほど声が震えていた。
声だけじゃない…
体も震えてきた。
「先生じゃなきゃダメなのにっ……私は先生が欲しいの…」
泰ちゃんは無言で手を握り、玄関を出た。
夏の生暖かい風が、私の肌を掠める。
「……大丈夫だよ、椎蘭」
泰ちゃんの手があまりにも冷たくて、私は泰ちゃんの手を温めるように隙間なく手を握った。
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