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「瀬戸椎蘭(セト シイラ)」
名前を呼ばれて高鳴る胸を押さえながら、私は返事をして席を立つ。
ゆっくりと歩きながら教壇の前に行くと、目の前には愛しい彼。
彼の名は水城湊(ミズキ ミナト)。
私の担任の先生である。
化学の先生で、白衣を着ていると漆黒の髪がよく映える。
少しだけ視力が悪いのか、時々黒縁のメガネをかけていて、少し面倒くさがりやで意地悪なところがあるが、そこが女子にとってはいいらしく、やたら人気。
顔がいいし、なんだかんだで優しいから仕方ない。
「お前、今回のテスト点数がた落ちだぞ」
眉根を寄せながらテストを渡してくる先生に、私は肩を竦める。
「だって今回は難しかったです!」
返却されたテストを見ると、用紙の余白部分に赤字で“赤点 居残り補習”と書いてあった。
「えー…居残りぃ?」
項垂れながら席に戻る私に、隣の席で幼なじみの天海大和(アマミ ヤマト)が笑いながら話し掛けてくる。
「お前も赤点かよ」
そうゆうお前も赤点かよ…
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