私の好きな人

2/6
前へ
/423ページ
次へ
「瀬戸椎蘭(セト シイラ)」 名前を呼ばれて高鳴る胸を押さえながら、私は返事をして席を立つ。 ゆっくりと歩きながら教壇の前に行くと、目の前には愛しい彼。 彼の名は水城湊(ミズキ ミナト)。 私の担任の先生である。 化学の先生で、白衣を着ていると漆黒の髪がよく映える。 少しだけ視力が悪いのか、時々黒縁のメガネをかけていて、少し面倒くさがりやで意地悪なところがあるが、そこが女子にとってはいいらしく、やたら人気。 顔がいいし、なんだかんだで優しいから仕方ない。 「お前、今回のテスト点数がた落ちだぞ」 眉根を寄せながらテストを渡してくる先生に、私は肩を竦める。 「だって今回は難しかったです!」 返却されたテストを見ると、用紙の余白部分に赤字で“赤点 居残り補習”と書いてあった。 「えー…居残りぃ?」 項垂れながら席に戻る私に、隣の席で幼なじみの天海大和(アマミ ヤマト)が笑いながら話し掛けてくる。 「お前も赤点かよ」 そうゆうお前も赤点かよ…
/423ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2526人が本棚に入れています
本棚に追加