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「湊も、ここから出勤したほうが早く着くでしょ?」
反論しようとした私の言葉を、ママはいとも簡単に打ち砕いた。
「…でも母さん。一応、俺たちは水城先生の生徒なんだよ?椎蘭なんて、担任なんだし…」
「それなら学校側に許可もらってるもの。いいでしょ?」
泰ちゃんが反論したのはいいが、ママは平然とした様子で飄々と意見を述べた。
そんな家庭の事情をわざわざ学校まで使って……
泰ちゃんも私と同じことを思ったのか、呆れたように深くため息を吐く。
「近い内に結婚したら一緒に住むことになるんだし、いいだろ?」
水城先生は私を軽く上目遣いしながら首を傾げる。
そんな顔したって……ッ
「なぁ、いいよな?」
ッ……
「………っわかりました。いいですよ、私は」
あんな顔されたら誰でも落ちますよ…。
「…だそうですよ、菜月さん」
私に向けていた視線をママに向けられ、それだけのことなのに、私の胸はチクッと痛んだ。
こんな苦しい思いがこれから続くのかと思うと、憂鬱だ。
そんな私の思いと共に、先生と私たちの同居生活は始まりを迎えた。
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