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初めて玖嵐くんを怖いと思った。
「だから、椎蘭ちゃんは俺みたいな同級生と恋するべきだよ」
さっきの表情は消え、今度は冗談っぽく言う玖嵐くんに、苦笑いを返して再び廊下を歩き始める。
先生に恋をするのはイケナイことなのかな?
そんなことないよね。
立場とか、年齢とか関係なく好きになっちゃうのが本当の好きなんじゃないの?
私は、そう思う。
自問自答を繰り返している内に理科室の扉の前に来ていた。
私は、先生だから好きなんじゃない。
もし先生が先生じゃなくても、私はきっと好きになってた。
…水城湊を。
真っ直ぐ前を見据え、小さく深呼吸をして理科室の扉を開ける。
「失礼します、先生」
扉を開けた瞬間、鼻を掠めた匂いに顔をしかめる。
「…ん。ああ、瀬戸か」
ビーカーの中の黒い液体を飲む先生を見て、目を見開いて固まる。
「な、何を飲んでるんですか…。しかもビーカーで…」
「コーヒー。お前も飲む?」
「いえ…遠慮します」
コーヒーは苦手。
でも、すごく憧れる。
コーヒーを飲める人って、大人だなって思うから。
すごく小さなことで先生との年の差を感じてしまう。
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