1 死にませんから

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あたたかいココアを出してもらって、落ち着いた。 「で、何してたんだ?」 「路地裏生活を始めようとしてました」 「路地裏生活だあ!? …その歳で?」 目の前のオジサンの名前は知らないが、人の良さそうな顔をしていて、悪い人では無さそうだ。人を殺したけど。 「私、ここに来たばかりでよくわからなくて。気がついたら三途の川の前にいて、とりあえず この子に乗って ここまで来て、なんか石畳だし中世ヨーロッパだし、角生えてるし、わけわかんないし、地獄がこんなところだったなんて。 トラックに引かれなければ痛い思いせずに死ねたかもなのに、お金ないし。 それに、地獄なのに住民はふつうに生活してるし…。 どうすればいいんですか?死後の世界の先輩ですよね!?教えていただけませんか?」 堰を切ったように今までの不安が口からあふれて、なんだかよくわからなくなってしまった。目の前のオジサンも迷惑だろうなあ。 「そうかそうか。大変だったんだな、お嬢ちゃんも…。しかし、少し質問させてくれ。 三途の川って何だ?トラックって何だ?あと、地獄って何だ?ここは地獄じゃなくてネクロスの首都、ネクロードだ」 はい?ネクロス?つか、ネクロス?某人気ゲームのネクロスですか?…そういえば、初めて会った生きたものって仮面とワインと素敵ファッションだったような。なんか、三途の川の前の死体は弓兵やら戦士やらに混じって魔術師が沢山いたような。
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