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巨大な城の内部の巨大な部屋の中に私はいる。
「連れてきたな。B地区の26通り13番地に葡萄畑を作ることを許可する」
「有り難き幸せです」
格好いいシーンなのに言ってることが…。
「それで、シンリだな」
「はい」
豪快そうな風貌に赤い髪に獅子のような鋭い眼差し。ああ、ここは0の時代なのか。
「よし、お前はとりあえず、俺様のために働け」
ああ、やっぱり。そんなことだろうと思っていた。
「強い力を感じてネクロス領内の北方へアルケインを派遣した。そのときの話を聞いたが、お前は俺様のため破壊しろ」
さも当然のように宣言されても私にその気はない。
「あの、」
「なんだ、給料なら弾むぞ」
不思議そうな顔をしてこちらを見てくる国王、カイゼル陛下。しかし、論点がずれている。
「陛下、私は素人です。人を殺すなんてできません」
「それなら問題はない。兵士は初め皆そうだ。しかし、そのうち慣れる!」
断言されても慣れたくないよ。そんなの。
「生意気を申し上げるのを承知で言いますが、無理です」
「そう言ってきた兵士も皆 今は国のために戦っている。それ以外に稼ぎ手でもあるのか?」
正直に言ってしまえば武器屋で働きたい。だけど、あれでは私は稼げないし。そんなことを言って店を潰されたらたまらない。
「わかりました。お願いします」
「だろうな。お前がネクロスで兵士になることは預言されていたも同然だ」
カイゼル陛下は満足げに笑った。
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