Prologue 寂しい人間

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しかし、何時からか歯車がかみ合わなくなった。友人の肩方には友達がたくさん話しにきた。友人の一人はいいように沢山の友人に利用されていた。見ていて気分がいいものではない。馬鹿だなあと二人に手を差し伸べて、どちらかの表情が曇ったら そちらをからかって元気付ける。私に出きることはそれしかなかった。友人というが、私には友人が一人もいない。友人がいないというには語弊があるが、私の本心をつける友人などは そうそういなかった。一人はいたが。授業で読んだ一節が何時までも心から抜けないのはそのせいだ。 ――私は寂しい人間です。 自業自得だ。かつての心の傷より人を信用しきれず、人に余計な節介をやき、人を遠ざけた。寂しい人間だから何だというのだ。自己愛に満ちていて何が悪い?しかし、憧れは私の手の届かないところにいるのだ。だって彼らはいつだって画面上にいるのだから。 「ただいま」 仕事で出払った両親とどこかで遊び呆けているだろう祖母、仲のよい"おともだち"とゲームセンターや本屋で金を使いまくっている妹どもに溜息を吐き、私はジャージに着替えた。本来なら化粧をして着飾る年頃なのだろうが、面倒くさいし あんな動きにくい格好で器用に都会を闊歩できるお嬢様方には尊敬の念を抱ける。 私は首からぶら下げたホイッスルを吹いた。
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