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葬儀の後、将軍と国王が去り兵士たちは何事も無かったように緊張をほぐしざわめき蠢いた。兵士の群れは皆解散していく。
「今日は大陸全土で休戦だし、ゆっくりしますかね」
空中浮遊を使い、壁を飛び越えようとした時にグレンさんがローブを掴んで溜め息を吐いた。
「そうも、いかねーみたいだぜ」
グレンさんの視線の先には、麦わら帽をかぶり手にスコップを構えた我が上司の姿が。
「まさか、いや、まさか。そんな、職権乱用みたいなことは…」
「諦めろ。アレがうちの上司だ」
私の安らぎの時間が…。アルケイン将軍は上機嫌の様子でこちらに近づいてくる。
「やあ、グレン。毎月恒例の畑仕事の時間がきましたよ」
鼻歌でも歌いそうな雰囲気でグレンさんに話しかける。グレンさんに用事ならば私は別にいいよね。気づかれないように、そーっと、そーっと。
「その件についてですが、シンリが是非とも手伝いたいそうです」
グレンさん!誰も言ってないだろうが、そんな事は!!
「本当かい?」
将軍は満面の笑みでこちらを見る。
「いや、私は別に…」
「閣下の葡萄畑とワインの生産を是非とも手伝わせてほしい、と俺に先ほど言ってきましてね。月一度、軍単位の大切な仕事だと言ってもやらせてほしいの一点張りで…」
「困った奴です」と肩を落とすグレンさん。言ってない。私はそんなこと一切 口に出してないし思ってもいない。面倒事はごめんだ。そんな事を知ってのことかグレンさんは隣でニヤリと笑った。
「お前だけ楽させてたまるかよ」
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