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「なぜに私がこんな事を…」
はめられた。他の兵士達が羽を伸ばしているのに、私たちは畑を耕していた。と、言っても畑仕事をしているのは私以外にどこか諦めたような表情の直属軍兵士たちだけだ。彼らは直属の印を胸に付けたまま泥だらけで作業をしていた。
「なんか、こう。魔導の力を応用してパパッとやったら良いんじゃないかと思うんだけどね」
愚痴をこぼしながらも振り上げた農具を下ろし土を柔らかくする作業は止めない。なにせ、早く部屋に帰りたい。
「だめに決まってるじゃないですか。葡萄の機嫌が悪くなってしまいます!美味しい葡萄作りは愛情からなんですよ」
「アルケイン将軍、」
軍手を手に付けている将軍は私の愚痴を聞いたようで美味しいワインになるための葡萄とは何たるかを語り出す。知らないよ、そんなことは。将軍、その愛情とマメさをもう少し部下に分けていただけないでしょうか?まあ、ネクロスの将軍は割とフレンドリーというか、面倒見いいけどね。
軍手と農具とパーティー衣装というアンバランスな組み合わせを優雅に着こなす将軍は「よしっ」と言うと、また作業を開始した。それが似合うのだから不思議だけれど羨ましいかもしれない。何かに熱中できるなんて。
「将軍、来月は配下の軍の当番でしたよね?」
農具を片手にした直属兵がアルケイン将軍に話しかける。将軍は少し考える素振りを見せた。
「ああ、来月は別の部隊が当番だよ。たしか、不死部隊の当番だったな」
不死部隊、って私の所属部隊だ。来月もやるの、これ?
「そうですか。あれ、その子は?直属では無いみたいですけど…」
その子 呼ばわりされた。やっぱり幼く見えるらしい。
「ん?ボランティアだよ、彼女は」
「ボランティア、ですか?」
兵士はボランティアという将軍と私を不思議そうに見る。不可抗力だと言いたい。が、角が立つのは嫌だ。
「率先して自主的に手伝ってくれたんだ」
アルケイン将軍は少しニヤリとしてからグレンさんを見た。やっぱり、気がついてるよね。
「はあ。物好きだね、君」
だから、別に率先してるわけじゃないし。
「物好きなんて失礼だな。君も彼女を見習って率先して耕せ。なかなか作業効率が良いんだよ、この子」
アルケイン将軍は満足そうにシンリと畑を見比べた。シンリは黙々と作業をしついる、帰りたい一心で。シンリは早く帰りたいと青空を眺めた。
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