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甘くどこか妖艶な響きを持った声。
自分でも何故従ったのかは分からないが、その声に俺は反射的に跳ぶ。
跳ぶと同時にさっきまで俺から死角だった方向から半透明の黄色い液体の塊が飛んできた。
横に掃けた俺にそれは当たらず、地面に生える草に落ちるとシュウと白い煙をあげる。
……酸!?
物体が飛来した方向を見るとキマイラから伸びる尻尾、つまり大蛇が首を擡(もた)げており、口からは半透明の黄色い液体がボタボタと零れている。
液体は大蛇の顎を伝って地面に落ちると、同じように白い煙を生じさせる。
俺は慌ててグングニルを構え、切っ先を向ける。
が、その必要はなかった。
虚ろな目をした大蛇は口から赤い血の泡が漏らし、その太い首を地に伏せた。
そして何度かヌメッとした長い身体を痙攣させると今度こそ動かなくなった。
鼬の最後っ屁とでもいうのか。
頭を貫かれても攻撃してくるとは、なんという生命力。
俺が避けた跡を見るとあの液体が触れた部分を中心にドロドロに融けている。
チートボディであることを含めてもあんなもん触りたくない。
俺が避けられたのはさっきの声があったからだ。
どこから聞こえたのか、辺りを見渡すけれどあるのはキマイラとくまさんズの死骸、それと森の木だけだ。
シルの声ではなかったし……、誰なんだ?
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